よりよい自分を常に探す | 松本 雅代

物事を捉えるときの時間間隔は、長いスパンで捉えるほうですか?

割と直感なんだと思います。すごく考えるタイプなんですけど、振り返ると感覚的に動いているような気がする。だから、思ったら割と動くんですけれど、コト、モノによっては時間が掛かることもあります。でも、今はすごくクイックなことを求められているので、仕事上では決断は早くなっていると思います。

そこは鍛えられた感じですか?

もう、すごく鍛えられましたね。spiceが出来て、立場が変わって、下の人も出来て。今までは一番下の立場で、その立場の中で出来ることを築き上げてきたんですけど、今は何かを決断して動かして、尚且つスピードも求められる。何かを形にしていくには、いろいろな方の手助けや許可が必要で、そういうものを調整しながら仕事を進めていくということには必然的に、手間や時間がかかりますよね。

だから自分の出来る決断はとにかく早くと意識するようになりました。そして報・連・相じゃないですけど、よりそういうことを大事にするようになりました。

初めのころは自信がなくて、色々なことが後手後手に回り、周囲にも迷惑をかけたことも多々ありましたが、最近はもう吹っ切れてきたというか、良い意味での諦めというか(笑) 「まあやってみよう」と。今のベストでやるしか、それ以上は出来ないから。出来ることを全力でやるようになりました。

そう思えるようになったのはいつ頃からですか?

そうですね…ここ最近のような気がします(笑)?良い意味での諦めって必要で、おごりやプライドは必要なくて、そういうものがなくなったのが今ということなのかもしれません。

この仕事に就いて8年目ですけど、今やっと仕事らしい仕事をしているな、という実感はありますね。今までももちろん与えられたステージでは全力で進んできましたが、自分の責任で大きな方向性を決めて動かしていく、ということはやっていなかったんです。プレッシャーもあるんですけど、今まで以上に多くの方とコミュニケーションをとりながら目標を達成していくということにやりがいを強く感じるようになっています。

必然的に掛けている時間も増えたし、 もう仕事が生活の一部みたいになっていますね。この仕事って、さっきから”生活”というキーワードが出てくるんですけど、単純に仕事とそうじゃないことって分けられなくて、自分の持っている感性を引き出して表現する、ということなので、それを磨く作業って日常なんですよね。感覚を磨くことに休みは無い、みたいなところはあって(笑)

spiceが扱っているものが、よりそういうところにフィーチャーしているお店なので、生活と仕事の境目がなくなっているような生活です。良し悪しありますが(笑) 好きだから出来ているという感じです。自分にとっては必要な事なので。すみません、話が脱線してますね。

いえいえ。そういう働き方は、ご自身に合っていると思いますか?

そういうのを悩んでいた時期もなくはなかったです。あまりにも一杯一杯になったときには「もう嫌!」って。でもよくよく冷静になって考えてみると、結局興味があること全般が仕事に繋がっているということに気がついて(笑)だから現時点の自分には合っていると思います。

十代の頃は、周囲の人の期待に応えようという意識が強くて、でもそこは自分の希望とは違う道だった。今は、期待されている部分と、やりたいことが同じ方向だから…

しっくり来ている感じはありますね。やっぱり両親のことはいつも気にかかるんですけど、元気でやりたいことを生き生きとやっている姿を見せることが大事かなと思っているので、今はそう出来るように頑張っている、という感じですね。

ご両親も協力的ですよね。

そうなんですよ。いろいろとやってくれますね。ショップバッグを作ってくれたり。でも、今思えばうちの母は洋服を作っていた人なんですよ。いつも近くに業務用のミシンがあったし、インポートの生地が家にあったりとか、そういう環境ではあったので、かけ離れた世界ではなかったのかなと。

大学の進路を決めたときも、お母さんの影響があったんですか?

進路はどちらかというと、父親のほうが。うちの父がもともと教員になりたかったんですよ。で、もし教員になりたいと思ったときに免許があればなれるし、それに加えて興味のある分野だったので、その学部に進んだというのはありますね。

それが結果的にはショップの定員さんになったと。

なったという。異色の(笑) オーナーのところでやりたかったのは、何もないところから、すべてを自分たちの力で作り上げるということに魅力を感じたから。そして、自分の興味のある’もの’、’人’に触れたいという思いが強かったのだと思います。ここで出来ることには自分の色々な可能性を試せると思ったから。その中に、販売、バイヤー、など…その他多くの業務があったというだけだったんです。

結果、本当に恵まれていたと思います。入りたてで何もわからないころから展示会にも同行させてもらい、業界で長く活躍されているすばらしい作り手の方や、それを伝える方々に出会うことができ、そういった方々から色々なことを学ぶことができましたから、そしてそれは今も継続中です。そういう恵まれた環境があったから今の自分があることに感謝をしています。