皮脳同根 | 神原 光未

私は毎日温泉に行きます。自分の家のお風呂には入らずに、一年で360日ぐらいは温泉ですね。ジムに行くとかではなく、岩盤浴やサウナでエクササイズして、そこが自分の最高のリラクゼーションの場所です。で、そこでコミュニケーションを取りながら、お客さまが増えていったという。

「どうして眉が綺麗なんですか?」「どうしてアイラインが取れないんですか?」とか聞かれて、そこでいかに眉がないことにコンプレックスを感じていらっしゃる女性が多いのか…ということに気付いたんです。

私はエステのお仕事をしていたんですけど、エステをした後にメイクをしてあげると、「次の日もこういう眉が描けたらいいのにね」と言われるなかで、自分はエステよりも眉を綺麗に仕上げるお仕事をしたほうが、もっと自分らしく生きられるんじゃないかな?と。

エステは他の方でも出来るけど、それぞれの輪郭にあった眉を描くというのは、なかなか難しいですもんね。プロのメイクアップアーティストが描いた眉が毎日”ある”というのは、皆さんのニーズもあって面白い仕事だなと思って、こちらのほうに入ってきたんです。

元々はエステをやっていらっしゃったんですか。そのときは、どこかにお勤めになってたんですか?

勤めていたわけではなく、自宅エステですね。

自宅エステのお仕事は、いつ頃からやっていらっしゃるんですか?

えーと…10年、いやもっと長いかな。まあでも、サロン名は変わっていますけどね。字画が悪いとか、スナックぽいとか・・・

スナックぽいサロン名ですか(笑) では施術の方法やサロン名を変えながら、ずっとサロンをやっていらっしゃるんですね。

そうですね、お客さまが綺麗になりたいという要望が叶えられることを、叶えられる範囲で…メインはアートメイクですけどね。あとはエステですね、コラーゲンやヒアルロン酸を導入して、フォトシルクと言う光エステで白く飛ばしていくものとか。コラーゲンはリフトアップさせる効果があり、ビタミンC誘導体はお肌を白くさせます。コラーゲンを導入するとお肌が白く仕上がって、リフトアップして、女性の悩みが少しずつですけど解決していくという。私は月に二回しているから、お肌はある程度持っていますね。しないとやっぱりシワもシミも増えるし・・・もう化粧品に頼る時代は終わりましたもんね。

そうなんですか。

そうですね、化粧品じゃ絶対に綺麗にならないです。美容整形のレベルに近い・・・アートメイクもそうでしょう?すぐきれい、ずっときれいが手に入る。エステでは、すぐ綺麗は手に入らないですもんね。

なるほど。アートメイクというものを、いまこうして目の前で拝見していますが、とても自然な感じですね。

自然ですね。綺麗に眉カットしてブローしているような感じですね。一昔前の、墨を塗ったような、マジックで描いたような感じではないです。特に私は3Dアート、手彫りに拘っているので。グラデーションで眉頭は薄く、眉尻は濃く、という風にしているんです。私は素肌美を目指しています。女性の美しさは素肌美だと思っているので、滑稽な眉や、アイラインは嫌なんです。

なるほど、そこには拘っていらっしゃるんですね。

そうですね。うちのお客さまには「自然で、アートメイクしていると気付かれない」とよく言われます。それが一番嬉しいですね。眉は「顔の額縁」と言っています。額縁のない絵はしまらないのと一緒で、どんなにべっぴんさんでも、眉が左右対称で、しっかりした眉じゃないと、お顔は映えないと思います。だから、私の眉も結構太めにしています。

人相学的にも、細くて薄い眉は「凶相」と言われるぐらいで。華僑の人たちや中国の人たちは、お金持ちはみんなアートメイクをしています。古くはクレオパトラの時代ですね、神に仕える巫女のお仕事をされる方や、位の高い方は、みんなアートメイクをしています。

目の周りを黒くするのは、魔物を寄せ付けない、邪気をはらう、という。特に、目の疫病が流行った時代には、目の周りを黒く塗ると疫病にかからなかった…という史実から、中近東には目の周りを黒く塗っている人が多いです。最近は日本の若い子も、目の周りが黒いですよね。

そうですね、結構黒いですね。

それもやっぱり、眉がぼけたり、目元がぼけたりすると、凶相なので。だから、それは理に適っているんです。昔から言われていることは本当だな、と思います。なので、他のところを一生懸命メイクするよりも、ここ(目の周りと眉)をしっかり。

目元と、額縁を。

そうですね。で、人間の顔は左右対称ではないんですが、唯一左右対称にできるところは、眉しかないんですよ。だから、眉さえ左右対称にきちんと描ければ、美人に変わるんです。そういう風に教わりました(笑) 私たちは、色々な眉が片方ずつ描いてある半紙に、反対側の眉を描くんです。で、最後に半紙を折って、透かして先生に見せるんです。

はあー、そういう練習をするんですね。

そうですそうです。だから瞬時に描ける。もちろんスケールでも測りますけどね。年齢によっては、眉の形がだんだん変わっていくこともあるので、また左右対称に修正していくとか…難しいですね。かなりのスキルがないと出来ないお仕事だと思います。