緊張感 | 原田 佳代子

USJのお仕事も、大阪でもMCのお仕事も、「やり切った」という思いがあった。

そうですそうです。嫌で辞めたわけではなくて、それが次のステップなんじゃないかな、という気持ちがあって。充分…とは言えないかもしれないですけど、ちょっと達成感もあり、さらに次のステップへ進もう、という思いがあって進んできた、と。でも、振り返ってみると、それは一本の線で繋がっていたな、と思って。全然関係ないことをしているようなときもあるんですけど、全てが役に立っているな、と思って。

こっちに帰って来てからは、大阪に居た頃より時間も出来て、茶道を習うようになったりとか。それも自分がやりたくて始めたわけではないんです(笑) 友達が「お茶のお稽古を見学したい」というので、母が習っているお稽古を紹介したんですね。そのときに、私も一緒に見学について行ったんですが、その友達が、事情が変わりお稽古をすることができなくなり、付添いで行った私が替わりにお稽古をします…という感じで(笑)

そうなんですか(笑)

そうなんですよ、だから私は全然、お稽古をしようとは思っていなくて。大阪に居たときも、少しだけお稽古をしていたんですけど、それが嫌だったので(笑) でも、お茶の稽古を始めたら、すごく楽しくて。お花とか書道とか、どんどん広がっていった、という感じですね。

というのと、そういうものを学んでいるうちに、着物もそうなんですけど、和文化という素晴らしいものがあるので、これは確実に誰かが継承していかないといけない。私はそれが出来る環境にあるな、と思ったんです。だから、私はそれをきちんと伝えていかなければいけない…と、どこかで思うようになって。先生になろうとか、そういうつもりは全然ないんですけど、私はこうして喋るお仕事をしていますので、言葉で伝えたり、何かイベントを企画して着物を楽しむとか、何か和の文化に触れてもらうとか、そういうことを多くの人に伝えていきたいな、と思っています。特に、子供たちに経験してもらいたな、と思っています。

今年の夏は『キッズうべたん』というイベントで、浴衣の着付け体験をうちでしたんですけど、そのときに浴衣を着るだけじゃなくて、お抹茶を飲む体験も一緒にして頂いたんですけど、子供たちがすごく喜んでくれて「楽しかった!」と言ってくれたので。浴衣の着方を覚えることが目的じゃなくて、きちんと正座してお茶を頂くとか、そういう経験をしてもらえただけでも良かったなと思っているので、これからも、子供たちにそういったことを伝えていけるように、私もちゃんと勉強していきたいな、と今は思っています。

なるほど。そこも、環境教育のお仕事で小学校を回ったときの経験が、繋がっているような気がしますね。

うんうん、そうですね。本当に、何ひとつとして無駄じゃなかったな、って思えるので。

きっちりとした人生を歩んできていらっしゃるんですね。

どうでしょう・・・?でも、私、子供の頃から、OLとかそういう職業には就かないだろうな、とずっと思っていて。

就きたくない、ではなくて?

就きたくないではなくて、なんとなくしないだろうなと思っていたので。学生時代は、本当に先が見えないというか、私はいったい何をするんだろう?と…やりたいこともなくて。悩んだというよりは、まあ何かに出会えるだろうな、というような楽観的な感じではあったんですが、きっと一日中デスクワークはしないだろうな、とは思っていました。

なるほど。今、実際にそうなった。

ええ。

でも、それが何かは分からなかった。

全く分からなかったです。まさか、自分がこんな職業に就くとは、思いもしませんでしたね。

でも、思いもしなかった職業のなかに、やりがいや達成感も感じていらっしゃる。

もちろん。大変なこともありますが色々な方と出会える仕事ですので、視野が広がり、色勉強になることもたくさんあります。

人と接するのは、昔からお好きだったんですか?

そうですね。大好きです。

今までの経緯を伺っていると、すごく順調に来ているように見えて、大きな失敗などはなさそうな気がしますが…

ありますあります。MCの仕事を始めた頃に、ある大きなお祭りの司会をさせて頂いたんですけど、そのときに全然段取りが把握できてなかったというか、なんとなく決められたことだけ喋っていたらいいのかな…と思っていたのですが、…全然知らない土地での仕事で、どうしていいか分からないことだらけでした。

本当は2日間仕事を任されていて、2日目は違う場所でお祭りがあったんですけど、1日目のお祭りが終わったときに、イベント会社の人にすごく怒られまして。「お前のせいで祭りが台無しになった」と言われて。もっと盛り上げないといけなかったとか、時間配分を把握してやらなければいけなかったとか…お前のせいで祭りが台無しになったから、明日は別の司会者を呼んである、と言われて。あのときは本当に泣きました。ホテルでぎゃんぎゃん泣いて。

確かに、確認不足、準備不足の上、分からないことだらけでした。初めての大きなステージで、よさこいとか色々あったんですが、演舞の間ステージの横に降りては泣いて、終わったら上がって笑顔でしゃべって…という繰り返しで。終わった後に色々怒られて、明日はもういい、と。ただ、その方は2日目に「帰れ」とは言われずに「明日は別のMCを呼んでるから、それを見て勉強しなさい。このまま宿泊して、明日はその人のMCを見て勉強して帰りなさい。」と言ってくださって。そのときの出来事は、本当に忘れられませんね。

その後、仕事をするのが怖くなって。ステージに上がるのが怖くて仕方がなくて、ものすごく緊張するようになったんです。なかなかそこから抜け出せなくて、「もう辞めようかな」って思った時期も長くあったんですけど、それこそ先程の子供たちの環境教育を初めてさせて頂いたときに、すごく楽しくて。なんかこう、自然と言葉が出てきた、というか。子供たちも喜んでくれましたし、呼んでくださった主催者の方も、ものすごく喜んでくださって。

それがきっかけで「小学校を回る環境のイベントを他にもやっているから、そっちでもやってもらえませんか?」と声を掛けてもらって、させて頂くようになったんですね。でも、それまでは本当にトラウマになってしまって…正直、何度も辞めようと思いました。だけどその都度、それでも「私で良かった」と言ってくださるお客さまに出会えたことが何よりの励みになりました。

そうだったんですね。

全然、順調なことばかりではないですね。

それでも続けていらっしゃるというのは、楽しい経験も沢山あるから。

そうですね。やっぱり、誰でも出来る仕事じゃないと思うので。そのなかで、私にお願いして良かった、というお声を頂くこともあるので。