緊張感 | 原田 佳代子

大阪でお仕事をされていたときと、山口に戻られてお仕事をされているなかで、違いを感じることはありますか?

うーん、違い…地元で出来ている、というのはすごく嬉しいです。先日『宇部まつり』の仕事もさせて頂いたんですけど、子供の頃遊びに行っていたような行事に、今度は反対の立場から参加できるということに、まず大きな喜びを感じます。それは、他所でやっていたからこそ思えることでもあって。他所でやっているときに「ああ、これが宇部のことだったら良いのにな」と思っていたりしていました。

というのと、色々な友達や知り合いが声を掛けてくださったり、助けてくださったり、周りの人から司会をご依頼頂いたり…そういう方の力になれる、というのもすごく嬉しいですね。また、「宇部の人なのね」とか「この人も藤山でね」とか同郷ということだけでぐっと親近感が沸いて。そういうのも、地域の繋がりというか、地元ならではのことだな、と感じますね。

海外に行かれていた頃から、割と早いうちに外から地元を見ていらっしゃるから、よくある「こんな田舎から早く出て行きたい」というような、そういうものとは違う視点を持っていらっしゃるような気がしますね。

まあ、私も大阪に居たので…高校生ぐらいのときは「とにかく外に出たい」と思っていたんですけど、出たことによって、すごく山口県って良いところだな、宇部って良いところだな、って思うようになりましたし…。もっともっと、多くの方にその良さを他県の人にも自信を持って伝えていって欲しいな、と思いますね。だから、私は絶対に「(地元には)何もないよ」とか言いたくないので、「すごく良いところです」と言いますね。

そう思ったり、発言したりする人が、増えていくと嬉しいですね。

本当にそう思います。UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)とかも、本当はすごいことなのに、宇部市民が知らなかったり、見たことなかったりするじゃないですか。そういうのが残念だなと思うので…、これからも伝えていけることがあれば、どんどん発信していきたいな、と思います。

ブログに書かれている記事も、すごくそういうことを念頭に置かれているような気がします。

ありがとうございます。

これからやってみたいこと、取り組んでみたいことは何かありますか?

今、着付けを教えたりしてるんですね。知れば知るほどはまっていく…その魅力を分かってくれて。そういう人たちが、もっと増えていったら良いな、と思うのと、着物だからと堅苦しく思うんじゃなくて、どの服を着ようかな?という、選択肢のひとつとして、気軽に着てもらえたら良いな、と思いますね。特別なものではあるんですけど、もっと日常生活のなかで、皆さんに着物を楽しんでもらうとか、そういったことを自分が広めていけたらな、と思っています。今は着付けを教えるだけじゃなく、着付けが終わったあとに、着物を着たままランチを食べに行こう、というような話もあったりするので、そういう楽しみ方を。

それは面白いですね。大勢で居ると、目立つし面白いですね。

そうですね。「いいな、私も着ようかな」とか「こういうときに着物を着て行ったら良いんだ」とか。よく「着物を着ていく場所がない」「着物を着る機会がない」とか言われるので…そうじゃなくて、もっとなんでもないときに着たら良いのに、と思うので。着物を着る機会のようなものを、もっとこちらも提供していけたら良いなと思いますし、皆がもっと楽しんでもらえたら良いな、と思います。この先にやっていきたいことというと、これからも発信し続けて、伝えていきたいという感じですね。

ありがとうございます。最後に、ご自身が美しくあるために、心掛けていることはありますか?

なんでしょうね…あまり日常生活という感じではないかも知れませんが、着物を着ると、すごく身が引き締まります。例えば、着物を着ていたら、着方ひとつをとっても「襟を正す」という言葉もあるように、背中を丸めることも出来なければ、大またで歩くことも出来ませんし、なにかこうスイッチが入りますので、いつも「美しく着物を着ていたい」と思います。

着物の着方も色々で、着ていれば良いというわけではなくて、帯の結び方とかも色々あるんですけど、やっぱりきちんと着れていないと、気になるんですよね。だから、きちんと美しく着物を着ていると、自然と背筋も伸びますし、あまりダラダラと過ごすこともできないので、こういう着物を着る時間は、大事だと思いますね。

まあ日常も、スーツを着てマイクを持てば、スイッチが切り替わるので。仕事中は、日常より緊張する時間が多いので…緊張している間は、ずっとスイッチを入れ続けていなければならないので、そういう時間が私にとってはすごく大事だと思いますね。日頃はどちらかというと、面倒臭がったりダラダラ過ごしてしまうことのほうが多いので。平常心では一切仕事はできませんので…そういう緊張感、ですかね。

緊張感が、自分のなかでよい刺激となっていて、人前に出るのにあまり変な格好も出来ませんし、それなりに身なりを整えていなければ、仕事も出来ない職業ですので。司会のほうでもそうですし、着物を着ても、ちょっと緊張感を持って過ごす時間があるというのは、なんとなく自分に必要で。こういう場がなければ、それこそ「美容院…面倒臭いから来月でいいか」とか、そうなってしまうこともあると思うんですけど(笑) やっぱり仕事があるから、きちんとしておかなければいけないなというのもありますし…答えになってますでしょうか?

大丈夫です。ありがとうございます。お仕事やお着物を着ることで、うまくバランスを取っていらっしゃるというか、そういうものから開放されると、素はダラダラしてしまうんですね。

完全にそっちですね。日常の大半がそっちなんです、本当は(笑) きちんとしているように見られがちなんですけど、全然そんなことなくて。スイッチのONとOFFが、結構激しいかも知れない(笑)

お着物を着ていらっしゃらないときにお話しを伺うと、全然違った話が訊けるのかも知れませんね。

そうですね。着物を着ると、ちょっと気持ちも変わりますので。

[写真・文/OURSELVES 取材協力/趣味のきもの 千粋]