人を真似る | 岡崎 春代
お話を伺いながら思ったのは…私の印象では、淳子さんは負けず嫌いなところがあると思うんです。
淳子さん ええ。
お父様は、そういう部分を知っていて、あえて厳しくしたのだろうか?と。
淳子さん そうでしょうね。「なんで褒めてくれないの?」って、いつも言ってました。「誰が従業員の前で褒めるか、バカか!この恥知らずが!」って、いつも車の中で大喧嘩しながら帰っていました(笑) でも、たぶんそうでしょうね。それで火を点けたんでしょうね。
春代さん SOSは出てましたけどね。「私は褒めて伸びる子なのに…」って。
淳子さん そう!
春代さん 従業員を育てるときにも、卵を扱うようにして育てないと駄目な子と、上から叩いて叩いて伸びる子と、あったんです。この子はたぶん、前者のほうじゃないと駄目って、自分ではよく訴えていたんですよ。だけど、叩いて叩いて。
淳子さん 叩かれあげた(笑)
でも、結果として叩かれて伸びた。
淳子さん うん、そう、そんな感じかな。
春代さん 伸びた?(笑)
淳子さん 伸びてない。まだまだ今からよ(笑)
今からですね(笑)
淳子さん 友達に「すごく羨ましい」って言われるんですよ。
羨ましい?
淳子さん 「家族の下で、苦労しなくても就職先があって。」って。「ふざけんなっ!」って、心の中で思って(笑) でも、最近色々な友達と飲みに行くようになって、色々な会社の話を聞いて、確かに家族でやることも厳しいけど、私が例えば大きな企業に入って働いたら…と考えたら、私はそういう中で育ったことがないから、私もそういう人達の気持ちは分からないよな…て、最近になってようやく分かった。仕事って、どこへ行っても何をしても、大変なんだなって。
以前は「親子で仕事するのが一番難しいよ」って言っていたんですけど、いやいや甘えも確かにあるなって、本当に思った。この一年一人でやってきて、やっとそれが分かった。本当に。昼ごはんを食べたいのに、なんで食べられないの?って、そういうところから(笑) でも、もっと食べられない人なんて一杯居るよね、と思って。うちは従業員さんが居ないから、楽だよなと思うときもあるし。
良い面も、悪い面もある。
淳子さん そうそう。どの仕事もそうなんだな、ということが今やっと分かったかなと。
この一年で、かなり考え方が変わった。
淳子さん 変わった、うん。
そうなんですね。お話を伺うのには、良いタイミングだったのかも知れませんね。
春代さん 本当、タイミングが良かったなと思いますね。美容室は、人口に対して増えすぎてますよね。
多いですね。
春代さん そうですよね。私たちのように技術者がお店をオープンするという、今までのスタイルとは別に、企業がやってきて多額の資金を出して、オーナーやスタッフを雇うというスタイルも増えていて。そういう意味では、同じような毛色の美容室ばかりじゃないですか。だから、良いタイミングで一年前にこの子が来て、さっきも言ったように全く毛色の違うお店が出来上がって、本当にお互いが切磋琢磨して…この子に売上が負ける日もあるんですよ(笑)
そこは先人としてのプライドが(笑)
春代さん 悔しいですよ。20数年やってきて「何で?」って思うときもあります(笑) もう少し経ったら、またこの子が別のことを考えるかも知れないですけど、それはそれで楽しみですね。
そこは、独自に動いていらっしゃるんですか?
淳子さん 独自です。もしかしたら、次のプランがあるかも知れないですね(笑)
春代さん この子のお姉ちゃん、長女はネイリストなんですよね。今は子供を生んでお休みしているんですけど、以前は一緒に働いていたので。本当にオールマイティで美容ができる、エステも着付けもネイルもまつげも…という感じで、山口県では珍しいんじゃないかと。
淳子さん 珍しいんじゃないですか?個人店では。まつげエクステを始めたのは、お客さまからヒントをもらったんですよ。
そうなんですか?
淳子さん 「都会ではエクステが流行ってるみたいよ」と、何気なく言われて。「そうなんだ、じゃあやってみようか」みたいな、軽い感じで。で、その場に居たお客さまに「ちょっとやらせてみてよ」って(笑)
そのときはエクステの経験はあったんですか?
淳子さん 全然(笑) 福岡に行って講習を受けながら。でも、絶対に触らないと上手にならないんですよね。カットもそう、やってみないと。人形でいくら練習したって、お客さまの頭の形はそれぞれ違うから。だから、エクステも何人も練習させてもらって。夜遅く22時・23時まで、何人も自分でモデルになってくれるお客さまを集めて。
そのときはお金を取らずに?
淳子さん 全然。ずっと首を曲げてやっていたので、首が取れるかと思いました(笑)
そういう、新しいことに挑戦するといった”勉強”は、苦にはならないんですか?
淳子さん 確かに…うん、そうかも知れない。苦にならなかったですね。今思えば、楽しかったんだと思います。やっているときは大変だったけど。
VOL.26に続く