人を真似る | 岡崎 春代
お父さんを超えられない。
淳子さん そう、超えられない。だから、違った面で出来ないかな?と思ったときに、私は”女”って思ったんですね。男と女の違い、と思ったときに…着付けをやればいい、エクステをすればいい。違う分野で、父親が出来ないことをしよう、と思って。
だから、今は着付け教室には5年、続けて通っていて。母親みたいに免許は持っていなけど、成人式の着付けなどは一通り出来るようになったと思っているし。エクステは、正直ここまで流行ってくれるとは思っていなかったんです。この小さい店舗で、私一人しかやっていないという状況で。一人なので大人数入れることは出来ないから、限られた時間ではあるけど、予約が一週間以降じゃないと入れられないというまでになって。
そこで、別に父親を超えたとは思っていないけど、父親には出来ないことがひとつふたつ増えてきて、ああ…やっと出来るようになったな、って。
それはとても興味深いお話ですね。美容師×美容師という側面では、先生を超えられないから別の面で挑んだ。そこが、グループ全体で考えると、提供できるものの幅が広がって、すごく良い方向に作用していますね。
春代さん そうなんですよ。スタッフが居なくなったことが、尻つぼみのような感じで寂しい反面、そのスタッフがここに居てこのお店をやっている限りは、同じようなカラーでずっと営業しているわけですよね。それが、スタッフが独立して、この子がここに来たおかげで、まったく違うタイプのお店が出来上がったというのが…意図的ではなくて本当に偶然…その場しのぎで、この子がここに来てくれたんですけど、結果的に良かったなって。良い意味で毛色の違うふたつのお店でやっていけるというのが、新しいなって思いますね。
ちょっとおさらいをさせてください。淳子さんが常藤店に来られたのは、店長になるタイミングですか?
春代さん そうですね。本当はもうここを閉めて、本店一店舗でやろうと考えていたんです。でも、この子が「ここを閉めるのは悔しい」って涙ながらに訴えてくれて。だったら、一円も儲けなくてもいいから、ずっとここに居て明かりを点けて、お店を開けておけばいいから。ありがとう…という感じで、本当に電話番…電話が鳴ればいいね、という感じで考えていたんですけど…意外とこれが、良いかたちになりました(笑)
淳子さんがこちらに移ってこられたのが…
淳子さん 一年前。
春代さん 去年の4月ですね。
じゃあ、一年で軌道に乗った。
淳子さん いや、どうなんでしょう。そう言っていいのか、いけないのか分からないけど…。私の中では「坊主の日が無かったらいいな」と思っていて、それが一年を通してまったくなかったので、良かったなって。
自分の中での想像は「電話が一本も鳴らないな」という…この店は潰れたんだろうな、という噂を聞くのかな?と思っていたら、案外皆さんが来てくれて。友達が友達を呼んでくれて…色々なお客様がいらっしゃいますよね。主婦の方も居れば、ご年配の方もいらっしゃる、ギャルの子も居れば、学生も居るし、飲み屋のお姉ちゃんも居て、そのお客様がまたお友達を呼んでくれて。
また私が飲みに行くのが凄く好きなんですよね。母親はお酒があまり飲めないんですけど、父親がすごく好きで、私もそれと同じなんでしょうね。飲みに出歩くと「あ、エクステのお姉さんこんにちは」「一緒に飲みに行こう」って、そうやってちょくちょく声を掛けられるようになってきて。友達も「良かったね」って、私に言ってくれるんですよね。「ここは美容院だけど、エクステでもいいじゃん。」って。本当、今は下関とか徳山とか岩国とか山口市とか…遠くからお客様が来てくれますね。それが本当に、私の中では自慢。
そういう状況は、こちらに移ってこられた当初は、まったく想像していなかった。
淳子さん もう、まったくしていなかった。最初はオープンさせるのが凄く嫌だった。この一年で7キロ太ってしまったんです、ストレスで。食べてしまって…嫌で嫌で。最初のころは「なんで電話鳴らないんだろう」「なんでお客様来ないんだろう」って。でも、今は冗談で「うるさいね、電話線切っておこうか」って(笑) 遠まわしの自慢なんですけど(笑) でも、鳴ってくれるようになりましたね。
そのぐらい頻繁に電話が。
淳子さん ええ。まあ…大型店に比べてみたら、どのくらい凄いのか分からないですけど、この小さいお店ひとつで、たった一人の従業員で、お客様と一対一で対応するという面では、限度があるじゃなですか。一人でやっているなかでは、結構来てくれているんじゃないかな、って。
春代さん 回転率からみると、良い傾向にあると思いますけどね。