風のように生きる | 林 祥子
自分自身が感じる。
結局、自分が今見ているものとかも、100%は信じてないんですよね。基本的に、自分が思うことや感じることを、疑うようにしているんですよ。それは、絶対に本当、じゃないじゃないですか。だから、時間を掛けて実際に物事を見るようにしています。
本当じゃない、とうのは…先入観や経験から来る決め付けだったり、そういうバイアスが掛かっているということですか?
そうです。そういうものに左右されることが多いから。
だから、ゆっくり時間を掛けて咀嚼してみないと、本当に本当なのかが分からない、と。
そうですね。だから、すぐに「あそこに行きたい!」と思って、それを諦めたくないんですよね。色々な理由があって、実現できない人も多いじゃないですか。でも、私は何かしら実現できる環境的に居るので、ということは私はそういう立場なんだろうな、と思うんですよ。だから、自分が出来ることを、出来ない人に写真や映像を通して伝えることが出来るかもしれない。だから、行きたいと思った所へは、何が何でも行くようにしています。
今まで行きたいと思って、行けてない場所はありますか?
去年、年末の休みを使ってモロッコへ行こうと思っていたんです。でも、今回流れが変わったので、どこか違う場所にしようかな…と思っているところです。
どうやって行きたい場所が決まっていくんですか?
うーん、何となく行きたい場所が出てきて…でも、国内だったら綺麗な場所とか、自然が好きなので自然が多い場所にするんですけど、海外だと先進国よりも発展途上国とか、そういう国の人のほうが、私たちが今持っていない大切なものを持っているような気がするんですよね。だから、そういう人たちがどういう風に生きているのかを、すごく見てみたいなと思って。だから、行きたいところはいっぱいあります。
自分の普段の生活とは違うものとか、未知のものとかに興味を惹かれるんでしょうか?
なんでしょうね…そういう場所に惹かれるというのは、感覚的なものかも知れないですね。
そういう場所に惹かれるようになったのは、写真を撮り始めてからですか?
そうですね。写真を撮り始めてから、五感を敏感に使うようになったというか…すごく耳を澄ませて「発見しよう」とか、実際に目に見えて無くても、ファインダーを通すと違う世界が見えてくる気がしたり。
面白いですね。ファインダーを覗いているときは、リアルな世界が見えていない…というようなことを言う人も居ますが、祥子さんの場合は、ファインダーを覗くときに、音や空気も同時に感じていらっしゃるんですね。
そうですね。確かにファインダーの中の世界って、一種の別世界だと思うんですね。だけど、その世界が私にはすごく居心地が良くて…人間を辞めたいと思ったときに…
人間を辞めたいと思ったとき??
人間を辞めたいと、思った時期があったんですよ(笑) 自然界に還りたいと思ったんです。それは、人と付き合わないための逃げだったと思うんですけど、その世界に逃げ込むことで、人間社会との境界線を自分の中で作ることが出来て、その世界に移行することが出来たことで、自分自身が救われたというか、そんな感じですね。自然に還りたいという思いが強くなって、そのときに屋久島に導かれて。それをきっかけにカメラを本格的に始めて、その世界が好きになって…
なるほど、自然に還りたいという思いがあって、自然がある屋久島に行こうと思い立って、そのときにカメラを手にした、と。
そうですね。私は結構、突発的に物事をすることが多くて、そのときはもの凄い勢いでするんですけど、継続がなかなか出来ないんです(笑) それは、私の性格だし、続けなくてもいいと思っているんです。だけど、カメラだけは続けて来れたんです。やっぱり「楽しいな」と思えるんです。動画も、カメラを使っているから一緒なんですよ。自分のファインダーを通して見ている世界をどう作っていくか?というところに繋がるので、自分が表現したかったり「こう見たい」と思っていることを作れる手段の一種なんです。
カメラに関しては、人から求められていることは意識されていますか?
うーん…誰かに頼まれて撮るときは、相手のある程度の満足度を獲得しないと、評価されないじゃないですか。だから、こういうものを求めているだろうな、という基準はクリアするようにしていますね。でも、どちらかというと、自分がこうしたいと思って作ったものに対して、後付けで評価がついてくるようになっていきたいな…と思っています。
今後、写真を自分の仕事にしていきたい、という思いはあるんですか?
そうですね、写真とか動画も仕事にしたいんですけど、私は空間デザイナーを目指していて…写真も動画もインテリアも建築も、全部一緒のような気がするんですよ。何かを作るということに関して、その辺の隔たりがないから、全部まとめて出来ればいいなと。