かわいくて、楽しいもの | 安藤 僚子

最初に入られた会社には、何年いらっしゃったんですか?

えーと、5年ですね。

どんな仕事をされていたんですか?

そこでは、主に飲食店舗の設計で、とんがったデザインというよりもマス向けのデザインというか、ファミリーレストランなど、大手の外食産業で、全国展開しているチェーン店とか。最初にお店の業態開発をするところから関わる仕事を多くしていました。どういう人に楽しんでもらって、どういったメニューを提供して、どういう空間にするか?店名やロゴデザイン、ビジュアル、看板、突っ込んでやるときには、ユニフォームとかお皿のデザインまで…店舗のプロトタイプをつくる仕事です。

地方のお店だとロードサイドのフリースタンディング型が多いので、内装設計だけでなく、外観がどういう風に見えるか?という外部のデザインもするし、内装も壁に飾る絵から、生けるお花のコーディネイト、黒板にメニューを書いた入りと、広く提案するのが得意な事務所で、そういう仕事を5年間ずっとしていました。

会社員時代で、思い出されるエピソードとかありますか?

えー、なんだろう?いっぱいありすぎて(笑) 良かったのは…出張が多かったんですよ。なので、国内の色々な地方とか、中国などのアジアとか、色々なところに行って町を見る事ができたので、その経験はとても勉強になったと思っています。

そうか、チェーン展開しているお店だと、東京だけとは限らないですね。

そうです。出張すごく行ってました。すごくマイルが溜まって、辞めたときにそれで海外旅行に行きました、ご褒美に(笑) すごく忙しくて、言い方は悪いですけど奴隷のように…修行のように働いていたんですよ。

修行の5年間(笑) そこから独立されたのが…28歳ぐらいですか。

そうですね。30歳になる前だったので。

そこの転機には、何かきっかけがあったんですか?

まあ、正直に言うと疲れちゃった、というか。デザイン事務所って、大手の会社じゃなかったので、すごく過酷なんですよね。仕事を受け持って、それを自分で回していかなきゃいけない。朝から終電まで働いて、徹夜も当たり前で、お金もそんなに貰えないし、土日もほとんど無いような状況で。没頭できた、という良い面もあるんですけど、5年ぐらい勤めると疲れてきたりして。年齢的にも30歳という…よく分からない節目でちょっと考えたり。

あとは、個人事務所だったので、5年やると生意気になっちゃう、というか…仕事を覚えて、前はボスが考えたデザインを従順に「いいな」と思ってやっていたのが、だんだんボスとは違う意見を考えるようになったり、自分のデザインというものを意識するようになったり…なんか、生意気になっちゃうんですよね(笑) それと、会社が少し大きな方向にシフトするという転換期だった、こともあって、結局そこに居るとボスを超えられない、ボスのサポート役で終ってしまうかな?みたいな思いもあって…まあでも、一番の原因は疲れていた、っていう(笑)

(笑)で、お一人になられて…

最初はフリーターみたいな感じで、今までのつてで図面を家で描いたりとか、デザインをするというよりも作図するとか。あとは、人の紹介で専門学校の先生をやったりとか、自分一人食べていけるぐらいは何とかやってました。

でも、やっぱりデザインするのが好きなので、図面描くだけじゃなくてデザインも出来ますよ、という話をしていたら、「じゃあやって」みたいな感じで頼まれるケースが多くなって、デザインを頼まれたら嬉しくてやってしまう…という風に、また仕事の比重が大きくなってきてしまって。

なるほど、自然と仕事の量が増えていって…。お一人になったときに、お仕事の面で何か「これを実現したい」といったイメージはありましたか?

そのときは、開放感のほうが強くて…恥ずかしい話、ふわふわしていたんですよ(笑) なんか、本当に「インテリアとかデザインとかもういいわ」と思っている自分も居て、何か違う新しいことを始めるかも…と。料理を作ったりするのも好きなので、ほとんど現実逃避なんですけど、小さなカフェとかバーとか出来たらいいなと思ったり、もう一度建築のほうに戻ろうかと思ったり…そのときに結婚願望がある良い彼氏が居たら、たぶん結婚していたと思うんですよね、そういう選択肢があったら。本当にふわふわしてたんですよね。

でも、結局自分がお金を得られるのは、ずっと自分がやっていたインテリアの仕事だった、ということに「はっ」と気付いて。結局、自分が社会で生きていくための武器って、これなんだなと。それを社会に出していく、それで勝負をせざるを得ない、と自覚して。それで、真剣にインテリアデザイナーになろう、とそのとき思って、だから図面を描いてちゃダメだ、学校の先生に甘んじていちゃダメだ…と思って、「デザインをやります」という風に言うようになったんです。

それはいつ頃のことですか?

独立して1年間ぐらいふわふわしていたので、2年目ぐらいですね。少しデザインの仕事も入るようになって、やっぱり自分でデザインするのは面白いな、と感じるようになったぐらいですね。そこで初めて、自分はインテリアデザイナーだと自覚したと。 なんか、何をやるのも遅いんですよ(笑) なろうとおもってなってるんですけど、自覚するのが遅い(笑)

「あ、なってたんだ」みたいな(笑)

「あれっ?」って(笑) だから、「独立したい!」みたいな、自分の事務所を持って、デザイナーとして、安藤僚子としてやっていきたい…みたいなのは、後から付いてくるタイプなんです。ふわふわして、「あ、でもこれだな」と。じゃあ、インテリアデザイナーを名乗ろう、と。