ちゃんと気を抜いて | 桜井 愛子

桜井さんは、観光フレンズを含めて活発に動いていますが、「自分に注目して欲しい」というような、タレント的な動き方ではないですよね。

あ、そこが私はすごく嫌なんです。キャンペーンガール的な仕事は好きじゃないです。写真を撮られるためだけに行く、みたいなお仕事は苦手なんです。

私は、ただ自分が目立ちたいだけじゃないというか、私を通して山口県を知ってほしい。例えば王道…防府天満宮、赤間神宮、巌流島…そういうところを紹介する人たちが沢山居るなかで、私はここをPRしたい!というところの情報を、自分が司会をするときには盛り込んだり。そういうことがしたいからこれ(観光フレンズ)になっただけで、キャンペーンガールをやりたかったわけではないので。

行った先の方々と仲良くしたいのは勿論だし、相手のことも知って、自分のところ(下関)のことも知って欲しいし、そういうところをすごく大事にしたいんですよ。

タレント的な活動は、個人的に何か別の目標があって自己PRのためにやっている、という方にはいいんでしょうね。

それはもちろん効果的だと思うし、どんどんやって欲しいです。その方が活躍してくれたら、山口県も盛り上がるし。

根っこは県内観光にあるから、桜井さん自身が良く思われても、それが観光に結びつかなかったら意味がない、と。

意味がない。だから「写真撮らせてください」と声を掛けられたときは、パンフレットを持つようにしています(笑) あとは看板をバックに撮ってもらうとか、絶対に意識してます、山口県を。

すごいなあ。徹底してますよね。

そのために(観光フレンズに)なったんですよ、私。…オーディションには受かると思っていなかったんです。「四ヶ国語喋れます」とか、すごい人たちが面接に来てるんですよ。もう絶対無理だ…と(笑)

そのときは、どんな風に自己PRをしたんですか?

恥ずかしいんですけど…なんだっけ、四字熟語で言うやつ。座右の銘?そんな感じの質問を受けて、私「出発進行」って答えたんですよ(笑)

(笑)

友達にも笑われました(笑) 「猪突猛進」って言えば良かったのに、それが出てこなくて。「SLのように!」とかフォローして。友達に「落ちたね、それ。」とか言われたんですけど、受かった(笑)

そういう機転が利くところが良かったんでしょうか(笑) 丸二年活動をしてきて、手応えはありましたか?

手応えというのは、正直分からないんですよね。自分がPRした人が、実際に来てくれたところを見たわけではないし、観光客数がものすごく伸びたわけでもないので。でも、私にとってすごく得たものが大きいと思ったのは、色々な人と出会わせて頂いたこと。県外の方々に長州が…山口県がどんな風に見られているのか、良い話も悪い話も聞くことができたり。県内の各市町の方と仲良くさせて頂いて、やっぱり改めて…各市町あっての県だから、県の観光フレンズや私は脇役で、市町を目立たせるための役割というか、そういう立場で居ないといけないんだなって思ったんですね。

私も、こういう仕事をしていると、目立ったり褒められたりすることも沢山あって、そういうところで”私”というものを出しすぎてしまうときもあるんですけど、やっぱり市町をPRしないといけないから、出るところ・引くところとか、そういうところをすごく学ばせて頂きましたね。山口県って、やっぱり各市町で成り立っているんだって、それをすごく感じました。

どこかに中核都市があるわけではなくて、ということですね。

そうそう。どこが一番、とかではなくて。私が下関を拠点にしたいと思ったのは、縁があるからだけではなくて、下関は県内で一番観光客数が多いんですよ。だから、ここから発信することで、より沢山のお客さまに伝わるんじゃないか?と思って、ここから発信しているんです。

絶対に「どこの出身ですか?」と聞かれるから、そこで「今は下関に住んでいます」というだけで、下関の人なのね…とう風に、他の市町の人からは思われちゃうんですよ。でも、私は山口県をPRしたいんだということをアピールして「県内の観光誘致を目指しています」という、そういう人になりたいと余計に思ったし、みんなにもそういう印象を持ってもらって、どんどん観光情報を私に流して!という風に思っています。

色々な出会いがあって、そこにちょっと近づいたかな、と。前はすごく粋がっていて、海峡ゆめタワー時代は「山口県をひとつにしたい!」って言っていたんですよ、いつも。でも、もうそんなことは言えないです、私(笑) 色々なことを知ったから。ひとつにしたいとは思わないけど、その人に合った山口県内のプランを紹介したいって思います。これまでの経験とか、人との出会いを活かして。

いまのお話を伺っていて、懐石料理が頭に浮かびました(笑) どれがメインディッシュというわけではないけど、全体でひとつのお料理として出来上がっているという。山口県の印象ってそんな感じなのかな、と。

うんうん。いや、でも本当にそんな感じです。「お吸い物」も外せないでしょう?(笑) 目立たないけど、最後に一杯あるかないかって、大きな違いがあるから。それが山口県内のどことは言わないけど、そういう要素って必要ですよね。そういう要素こそ、私は好きなんですけどね(笑)

常にこういう気持ちでいたいと、気をつけていることはありますか?

気をつけていることは、さっきのディズニーマジックです。それをいつも心掛けているので。観光パンフレットに書いてあることを読んだり、それをお客さまにそっくりそのまま言っても、それはパンフレットを読めば分かることだから。それを私だったらどう説明するか?どう楽しそうに伝えるか、どうすれば「こういう視点から見ると楽しいんだ」と分かってもらえるか、というところに気をつけています。

その方に合わせて。

そうですね。たとえば今は案内のことでしたけど、山口県のことだったり、司会でもそうだし。自分から発する情報はマニアックなことだったり、王道のことばかり言わないとか。そのマニアックだからこそ、伝わりにくいその良さを、私だったらこう言うとか…それを一言で言うなら、やっぱりディズニーマジックなんですけど(笑)

マニアックなことを説明するにも、王道を知らないと説明できないですよね。そこは人一倍勉強されているんでしょうね。

いやいやいや、そんなことはないですけど。

まあまあ、そういうことが好きなんでしょうね。

そうですね。(一眼レフカメラを指して)カメラを持って歩いているのは、ブログのためじゃなくて、自分が撮りたいものを撮るためなので。私は「仕事をしなくちゃ」と思うのが嫌なので、「あ、いいな。」と思ったものがあったら、いつもすぐ撮れるようにしてるんですよ。

というのは、どこかでずっと観光を楽しんでいたいから。ずっと山口県を好きでいたいし。だから、そういう風な感覚で居たいですね。お仕事なんだけど、いつもどこかでちゃんと気を抜いて、山口県を楽しんでいたい。

「お仕事だから」ではなくて。

そうそう。ブログ書かなくちゃいけないからカメラを持っていく…ではなくて、自分の撮りたいものを撮るために。PRのときもそれを気をつけているし、ブログにアップする写真も…王道も撮っているかもしれないけど、あえて王道じゃないところをアップして、「これってなんだろう?」と思ってもらいたいです。自分が楽しんでいる、という感じですね。

子供の頃からずっと、一貫してますね。…やっぱり公民館の存在は大きいですね。

大きいでしょう?(笑) すごくいいところですよ。

今でも行かれるんですか?

あ、行きます行きます。埴生に帰ったときにも、公民館に必ず寄りますね。そしたら、掘り出し物の…どっから出てきたんだ?というようなパンフレットを、知り合いの人が出してきてくれるんですよ。

掘り出し物のパンフレット(笑)

「前場川のいろいろ」とか。前場川という川があるんですよ。そこれ見られるちっちゃいお魚…ハヤとか、分かります?

分からない(笑)

えーっ(笑) あの、きれいなドブとかに居る、メダカの大きいやつ。ああいうのが、ちゃんと手描きの絵で、2~3枚に渡って同じような魚がぶわーって描いてあって。「えーっ、これパンフレットにしちゃったの!?」「ここでお金使っちゃうんだ!」とか…面白いですよね(笑)

(笑)

そういうのが大好きで。絵とか飾ってあるでしょう?幼稚園児が描いた「母の日」「父の日」の絵とか、そういうものとか見ていたら「面白いな~。」って。もう、その地域の人たちのことが詰まってるんですよね。それすごく良くないですか?

確かに。

ねー。しかも、そこでサイレンが鳴るんですよ。夕方の6時と朝の10時かな、小さい頃はそれを目安に帰るでしょう?それって、すごく重要じゃないですか。公民館ってすごくいいですよ。詰まってます。思い出深いのは、やっぱり埴生ですけど、スタートなので。でも、色々なところにも行きます。

この前は、下松の「きらぼし館」に行きました。「星ふるまち 下松市」だから、星が有名でしょう?きらぼしの”ぼ”の濁点が☆だったんですよ!すごく可愛くて、そこばっかり写真撮っちゃって(笑) 行ったところで特に何も無いんですけど、鶴の写真が展示されていて(則安進 写真展「ツルに魅せられた男の記憶」)。良かったですよ!すごく鶴を愛していらっしゃるんだな、と。真冬の大雪のなか撮影されていて、そこにまた感動しましたね。そういうところで思いを馳せて。そういうのもいいですね。

[写真・文/OURSELVES 取材協力/みもすそ川公園(山口県下関市)]