今をたのしむ | 多原 美加

人のお世話をするというか、人の役に立つというのは好きだったんですか?

好きなことですね。人を喜ばせることが大好きで、それは幼い頃からずっと。自分がちょっときつい目に逢ってでも喜んでもらうということに、すごく喜びを感じていた子だったので。それはやっぱり、今もその考え方というか、喜びを感じているところですね。

美加さんの言動や活動内容を見ていると、あまり「自分がどうしたい」みたいな思いが見えにくいところがあるというか…

あ、そうですね。「自分が」というよりは、サークルなり仕事場なりですけど、その人の才能を見つけて持ち上げるのが、すごくたのしいんですね。だから、私は陰でも全然大丈夫で、役割を見つけて配置するとか、その人の才能を見つけて引き出す、というのがすごく好きです。

自分にスポットライトが当たらなくても。

当たらなくても。「リーダーになれたらいいな」と思った時期もあったんですけど、私にはちょっと向いていないと思って(笑) 陰から、その人たちが生きる喜びを得られる、お手伝いができたらな、と思って。ほんとそれがこの10年ぐらい、ずっと色々な活動を通じて、同じ思いでやってきています。

やっていることが違うだけで。

そうですね。でまあ、最初は収入にならないことばかりしていたんですけど。たまたま、うちの父がポンポン菓子をずっと作って売っていて。ほんと私が生まれてすぐから始めているんですけど、もう体もだんだんきつくなってきていて、だんだん跡取りとかそういうのも意識しだして。誰も継いでくれる人が居ないというところで、私がぜひポンポン菓子を残したいと。添加物を全然使っていないポンポン菓子を…いま食べるものに添加物がすごく多いので、自然そのままのおやつをぜひ届けたいと。

添加物の入っていないお菓子を探している方って、結構いっぱい居らっしゃるので、そこでもやっぱり橋渡しというか、どんどんそういう方にも紹介していきたい。で、今までの売り方も変えて、こういう素朴なお菓子でも美味しいんだよ、というのを教えたいなと。

そのお話を聞くと、「橋渡し」というところがより具体的になりますね。お父さんがポンポン菓子を作っていらっしゃるというのがまずあって、かたや無添加のお菓子を探していらっしゃる方がいらっしゃって、そこがうまく繋がっていると。

そうですね。あとはもうそれが広く…アレルギーのない方にも、素朴というところで…本当にお米とお砂糖とお塩、ちょっとお塩を入れたりとか、本当に少ない材料で作れるということに、すごく喜びを感じていて。私はまだ作ってないですけど、それがすごく自慢というか…感じています。本当にたくさんの人に知ってもらいたいな、と今すごく思っています。

お父さんのお仕事について、子供の頃と今とでは捉え方が違いますか?

違います。子供の頃は、常に傍にポンポン菓子があって、友達からは「いつも家にポンポン菓子があっていいね」と言われる状態で、でも私にはそれが当たり前で。毎日のようにポンポン菓子の匂いを嗅いで、「ドカーン」という作る音も毎日聞いて。だから、全然その有難みというものに気付かないで育って。中学生の頃も、ほぼ強制的に仕事を「手伝わされた」という感覚なんですけど、ずっと仕事を手伝ってきて。部活をすることもなく、学校から帰ったら仕事を手伝って…という状態だったので、当時はやっぱり拒否反応というか、「私はこの仕事はしたくない」ぐらいの気持ちで居たんですね。

で、結婚して10何年経ったときに、だんだんと「このポンポン菓子、誰も継がなかったら消える日が来るんだな」と感じ始めまして。寂しいなーって…じゃあどうしたらいいのかな?っていうのを、5年ぐらい前からちょっとずつ感じ始めて。たまたま、自分の離婚というきっかけがあって、それを機に思い切って「店を手伝わせてもらえんでしょうか?」っていう風に父に言って。「じゃあ、お前が継ぐか」という話になって。そこで私も「よし、本気でこの家を継いでいこう」という風に決めて、スタートしたのが約2年前になります。

で、そこからやっと1年半ぐらい掛かって仕事を覚えてきて、仕事でも見渡せるようになったのが、ここ最近ですね。それまでは一生懸命走っていた、という感じだったので。やっとゆっくり、自分の家の商品の良さをもう一度見つめ直して、どういう風にアピールしていこうかな?と思っているところです。