人が好き | 岡崎 淳子

確かに、新しいお店に行くときって、緊張しますよね。

春代さん 特に、女性にとって髪の毛というのは…メイクだったらやり直せばいい。でも、切ってしまった髪の毛は、付け替えることは出来ないので。なので、初めての方が安心して、荷物を預けてシャンプー台に座ってもらうまで、どう接客するか?という。初めての方が怖くない、入りやすい店、というのを心掛けています。今はそれだけですね。

淳子さんは、そのような心構えというか、お仕事に関して考えていらっしゃることはありますか?

淳子さん ここのお店は、この一年が「初めまして」だったから、私は一度来てくださったお客さまが、二回目、三回目、ずっと何年も来てくださるようなお店にならないといけないな、と思っていますね。そのために何を頑張るか…私もまだ新米一年生なので、それも手探りなんですけど。

私、強そうに見えると言われるんですけど、本当にビビりなんですよ。うちの姉はどちらかというと好奇心旺盛なので、新しいお店が出来たら「ちょっと行ってくる」という感じなんですけど、私は「いやー恥ずかしい」というタイプなんですよ(笑)

で、こちらの店に来ることになったときに、東京へ一週間遊びに行ってきていいよ、という風に言われたんです。でも、ひとつ条件があって、「美容院に行って来い」と。「お願いだから一回だけでも行って来い」と言われて、横浜の美容院に行ったんです。

そこは、どこでも良かったんですか?

淳子さん どこでも良かったんです。私は本当に、ずっと父親に髪の毛を切ってもらいたい…それはイコール”尊敬”だったんですよ。上手だから、という。だから、他の誰にも触らせたくなかったんです。でも、横浜のお店にぽつんと行って、もうドアを持つ手もガクガク震えながら(笑) 友達に「お願いだから付いてきて」と頼んで。そのとき、初めてお客さまの目線が分かったんです。こんなにドキドキするんだ、こんなに美容院って威圧感があるんだ、って。「めっちゃ嫌やん、美容院」って思った(笑)

そうか、それまでは他の美容院に行ったことがなかったんだ。

淳子さん なかった。初めてなので、どうしたらいいか分からない。自分のお店と、頭の中で比べながら行ったんですけど、分からないんですよ(笑) ここにはこのお店のやり方があると思うから、ボケーっとずっと立ったまま「どうしよう、どうしよう」「もう、絶対二度と行きたくない」と思いながら。

でも、そのときに得たものは一杯ありました。じゃあ、こういう店じゃない、ドアをガチャっと開けたときに、家に帰ってきたような、「また行こう」「淳ちゃんとお喋りしたい」と思えるようなお店がいいなと。友達と井戸端会議が出来るぐらいの、そんなお店がいいかもなって。でも、癒しを求めて、綺麗になって、おしとやかにしたいと思うお客さまもいらっしゃる。そういうのもある。でも、私は秘密話が出来るぐらいの、ギャハハと笑えるような、そういうお店がいいなと私自身も思って。そんな感じで…敬語って大切じゃないですか、目上の方に対しては。初めて来たお客さまでも、年下の方でも。でも、私と話して帰ったら、友達になるんですよ(笑) 「じゃあね!」って言いながら見送って(笑)

これが嫌だというお客さまも居るかも知れない、でもそれは空気が読めればいい。ここまでは入ってはいけないんだ、ということが分かれば。でも、グイグイ来るお客さまも居る(笑) なので、敬語を使いながらも、フレンドリーに方言を交えながら。こういうときに方言って便利だな、って。