自分のカラー | 川畑 真弥

いえいえ、その話はすごく興味深いですね。

前に、硫黄島で遺骨収集のボランティアがあると聞いて、ネットで調べたら一週間ぐらい行けるんですよ。で、主人に「休ませてくれ」と頼んだことがあって。「行きたいんだけど」と言ったら、「店はどうするんだ」とすごく怒られて(笑) で、結局話は流れたんですけど。かなり過酷な条件のなかで遺骨収集をするんですけど、それでも行きたい。行けますかね?

どうでしょうね。まあでも、条件が揃えば…。川畑さんが伝えていきたい戦争というのは、

特に日本人が関わった戦争ということなんですか?
そうそう。今起きている戦争ではないんですよ。日本人はもう戦争に携わらないじゃないですか。昔の、第二次世界大戦とか、太平洋戦争とか、そういうものですよね。その残骸が残っているというのが、分かっているじゃないですか。それを撮りたい。

プラス、そういうのを突き詰めていくと、廃墟も撮りたいなと。でも、怖いので行けない。たぶん、なんというか…”人が居た形跡”というのを、残したいのかなと。人は居ないんですけど、人が居たという。廃墟写真とかもすごく惹かれるんですけど、怖いのであまり好きじゃないですね(笑)

(笑)

でも、幽霊は居ないと思っているので、信じてはいないんですけど、でも一人で行くのは怖い。一時、廃墟写真って流行いましたよね。

そうですね。特に「廃墟」「戦争」というと、軍艦島なんかはツアーも出来ましたよね。

軍艦島に行ったカメラマンさんに言われたんですけど、好きに取れないので「川畑さんが行っても、きっと楽しくないよ」と。感性は持っていると思っているので、自分が見たまま、感じたままの写真を撮りたいので、だからプロになるのは難しいのかな…と思って。言われた写真を撮るのが嫌いなんです。「これを撮ってください」という写真って、あまり好きじゃないんですよね。あと、人物がピースしている写真とか、記念には撮りますけどあまり好きじゃない。

私がやっているのは、風景の中に人が居る、という風景写真なんです。たまたま人が居るよ、という。だから、全然他所を向いている写真が多いです。カメラ目線はあまり好きじゃない。集合写真も好きじゃないんです。誰でも撮れる写真ではなく、自分の色が出た写真を撮りたい。主人に「100人いたら100人が感動する写真を撮らないといけないんじゃない?」と言われたときに、「じゃあ、私は100人のうち1人でも、自分の写真が『いい!』と言ってくれる人を選ぶカメラマンになりたい」と言ったら、「じゃあ、商売にはならないね」と。主人は商売人で、すぐに商売と掛けるので、喧嘩になるんですよ。

カメラをしていたら、商売でやりたくない。自分がどう撮るか?という。「こういう写真を撮ってください」ではなくて、自分の目線で、感性で撮っていくほうが好き。元々、中学のときに美術部だったので、絵を描いていたんですよ。で、私の父も絵を描いていたし、祖父も、叔父も、絵描きさんだったんですよ。たぶん、その血が一番私に濃く流れているのかな、と。それが、私は絵じゃなくて写真のほうに。でも、キャンバスに描くのと、ファインダーを覗くのって、たぶん一緒なんですよ。「考えずに、見たときにどうかな?という、感性で撮っているんだろうね」と、親戚の叔父さんに言われました。

自分は何も意識してなくて、感性ということも考えずに撮っていたので、そう言われたときに「あ、感性があるんだ」と思って。いいことなんだな、と。なかなか「私には感性があります」とは、恥ずかしくて言えないですけどね(笑)

そうですよね(笑)

言えないですけど、叔父に言われたときに「あ、そういうことなんだ」と。人とは違う視点で見る、という感性があるのかな?と。でも、プロの方は全然目線が違いますね。一度、このお店を撮影して頂いたときに、やっぱり目線が全然違ったので、すごく勉強になりましたね。5時間ぐらい撮影して頂いて、私がいろいろ訊くので、カメラマンさんもいろいろ教えてくれて、すごくたくさん吸収させて頂きました。だから、すごく得をしている。プロの方に会えて、いろいろ教わることができて。プロの方は違いますね。私はセミプロ…普通よりは、まあ上手いかな…ぐらいですね。その先に行かなきゃいけないんですけど、なかなか先に行けない。

お話を伺っていると、商業カメラマンよりは、アーティスト寄りなカメラマンなのかも知れないですね。

ああ、そうですね。商用じゃできないですね。自分の作品、という。だから、お金は要りませんよ、と。お金が発生すると出来ないですね。

そうなると、100人のうち1人が「100万円で買うよ」みたいなほうが、商売としてはいいのかも知れないですね。

あ、そのほうがいいですね。だからほんと、まったく売れないですよね(笑)

1か0か、みたいな(笑)

だから、主人はダメだと(笑) 写真で商売って難しいですね。一時、このお店を始めた頃に、占い師さんに相談するぐらい悩んでいて。お店をきっちりやるべきなのか、写真の道に進むべきなのか…占ってもらったら、「今は基盤をちゃんと作りなさい」と言われて、お店に集中することにしたんです。

なるほど、いま余裕が出てきたということは、基盤が出来上がってきた…という。

そうですね。なので、ぼちぼちその道に行ってみようかな、と。今も、知り合いのギタリストさんから、プロフィール写真とかジャケット写真を撮って欲しいと頼まれていて、そういう新しい話もあるので楽しいなあと。それが実現するかしないかは分からないですけど、その方も私の写真をずっと見てくれていて、「真弥さんの感性で撮って欲しい」と言ってくれているので、どういう風に撮ればよいのか分からないんですけど、勉強がてら撮らせてもらいたいな…と。常に勉強させて貰っている感じですね。だから、お金が発生して欲しくない。

発生して欲しくない。

欲しくない。発生すると、緊張するので。千円でも、1万円でも、そこにお金が掛かってしまうと、すごいものを撮らないといけない…そう思うよりは、お金は要らないので自由に撮りたい。以前、鉄工所の写真を撮りに行ったときに、社長さんが「皆には言ってあるから、好きに撮って」と。それはもう、面白かったですね。鉄工所は面白い。

鉄工所は面白かったですか。

面白かったです。いろいろ絵になるものがありすぎて、真夏に2時間ぐらい、ぐるっと写真を撮っていました。ごちゃごちゃとしたものがあったほうが、楽しいですよね。仕事をしている人の写真というのも、いいですね。機械と一緒に、働いている人を撮るという。

働いている人に焦点を合わせるのではなく。

全体ですね。当てるとしたら、顔ではなく手元。そういうほうが、楽しいですね。…なんなんですかね。

なんなんでしょうね。

たぶん、変なんでしょうね。よく変って言われるんで。自覚はないんですけど、すごく言われるので…たぶん変わってるんでしょうね。