自分の気持ちで選ばない | 林 里江
(笑) そこは抵抗はなかったんですか?
「よくあっさり帰ったね」とか言われるんですけど、結構私は自分が決めたことには潔くて、就活もせずに父のところで働かせてもらうと決めたんだから、嫌だと言える立場じゃないな、と。
お父さんの事務所で働くことを決めるまでに、他の仕事に就くことを考えたりはしませんでしたか?
一切ないです。やりたいことも夢もなくて、それでも楽しいんです、私。父のところに私が入ることで、面倒を掛けることもあると思うけど、それで父が助かるなら…父が助かる部分と、私が助かる部分、家族で助け合えるから、それでやりがいを感じていました。
確かに、合理的ではありますね。
必要とされているところで、頑張ることが好きなんですよね。勝手に思い込んでいただけで、必要とされていたかは分からないですけど(笑)
いや、必要とされていたと思いますよ(笑) 一貫して、ご自身がなりたいものや目指したいことは持たず…ですか。
働きながら、例えば「経理をやって欲しい」と言われて簿記の資格を取ったりとか、この仕事をするまでは行政書士の勉強もしていたんですけど、急に今の仕事をすることになったので、行政書士の勉強は一切止めて、今度はこっちの勉強を始めました。
先にそういう立場に置かれて、そのなかで必要とされる目標に向かってやっていく、と。
そうですね。そのほうが合っているなーと思っていて。自分に「あれになりたいから」「あれをやりたいから」というのが今までなかったので、そのほうがすごくやりがいを感じていました。今も、ですけど。
そのほうが、目的がはっきりしますもんね。
そのなかで、自分のやりがいや楽しさを見つけるのが、楽しかった。そして、そのなかでしっかりと結果を出せる様、頑張ることが楽しい。
それは、昔からそういう考え方なんですか?
仕事に関してはそうですね。
お父さんの仕事をお手伝いされていたのは…
22歳から…29歳までですね。で、29歳から今の仕事をしています。
今のお仕事は、今ちょうど3年ぐらいですね。
丸3年、4年目に入ったぐらいですね。
エステの仕事に変わるきっかけは?
家庭の事情で。母がオーナーなんですけど、母がなかなかサロンに出られなくなってしまったので、代わって私が。全然代わりになれていないし、今もオーナーは母なんですけど、日々の実務やサロンワークは、ほとんど私がやっている状態です。
そのときも、すんなりと受け入れられたんですか?
ここの化粧品やエステは、顧客として愛用していたので…でも提供するほうになりたいとは思っていなくて。だから「ええっ!」っていう感じだったんですけど、他にやる人は居ないし…じゃあやろう、と(笑) やらないといけないよね、みたいな感じで。なので、結構頑張ったほうだと思います。
受験にしても何にしても、あまりすごく頑張ったという記憶はないんですけど、この仕事に関しては、始めたときからすごく頑張ったと思っています。やっぱり、お客さまの肌を触らせて頂く、という責任感とか、いろいろあって。
でも、この仕事に就いたときに「私、この仕事を一生やろう」と思ったんです。だから、一生の仕事として、まずは好きになるために努力をして、好きになってやりがいを見出した後は、一生好きで居続けるための努力をずっとしている感じです。
「一生やろう」と思ったという、そこの心境をもう少し詳しく聞かせていただけますか?
勉強を始めて、やりがいをすごく感じてきて…自分の勉強とか実技の練習とか資格とかが、全て仕事に活きるんですよね。そして、この仕事には定年がない。同じ業界で頑張っていらっしゃる、60代・70代でバリバリ働いていらっしゃる店長さんとかオーナーさんとお会いする機会があるんですけど、そういう活き活きとして、いつまでもキラキラしていらっしゃる女性を見ると、これは一生愛してゆける素晴らしい仕事だな、と思ったんです。
今後宇部から出る予定もないし、結婚もしているし、一生仕事は続けたいという思いがるので、この仕事で一生やっていきたいな、と思いました。
メンターになるような先輩がたくさんいらっしゃる。
そうですね。やっぱり皆さん幸せそうに活き活きしていらっしゃるから。もちろん、裏ではいろいろな事情を抱えていらっしゃる方も沢山いらっしゃいますけれど。私もおばあちゃんになるまで、ずっとこの仕事をやりたいな、って思ったんですよね。というより、途中で辞めることが考えられないですね。
ご自分がどうなりたいかは状況に応じて変わっていく一方で、お仕事というものについては、単に”お金を稼ぐ”という以上の価値を感じていらっしゃるんですね。
感じていますね。やっぱり、今ある環境や状況は、自分が選択してきた結果だから、そのなかで自分や家族が最大限幸せになれる、バランスの良い環境を作る…自分が何をやりたいか?よりも、そちらを基準に選択したり決定したりするんですよね。そんなに大層なことではないんですけど、そのほうが頑張れるんですよね。
これをやることによって家族が喜ぶ…とかそういうことの上に、自分のやりがいとか夢とかを持って来れたら、自分だけの夢とかよりも頑張りがいがある、と、この仕事を始めて思ったんですね。あとは、出会いですね。すごくいろいろな人に出会うから、それがとても楽しい。
出会いが楽しい。
この仕事は次々と新しい素敵な出会いがあるから、それもこの仕事が楽しい理由のひとつかな、と思います。