今をたのしむ | 多原 美加

美加さんは、お子さんの病気や障害を”個性”として扱っていらっしゃるような印象ですね。「この人はこういう人だから、じゃあこの人がより気持ち良く生きていくためには、どうすればいいだろう?」というような。

そうですね。それもたのしいです。その発見もたのしい。子供にどういう特性があって、そこで悲しくなるんじゃなくて、それを克服したりとか、生活しやすくするための工夫っていっぱいあって、いっぱいできるんですね。今の時代は、インターネットを使ってそういう情報も得ることができるので、工夫ということもすごく大事なことなので。

できないからと落ち込むのは、その子供を否定することになるので。私も親なので悲しくはなるけど、ずっとそれではいけないなと思って、それを一回認めて「じゃあ、どうする?」と。常に「じゃあ、どうする?」と自分に問いかけて。そしたら、自然とそういう情報も入ってくるので。

だから、家の中でも私から笑顔で子供たちに接して、障害のことも子供たちに暗く話をしたりすることはなくて、普通に明るく「あなたは、こうだからこうだよ」という、淡々とした説明をして。「恥ずかしいことじゃないよね」って、子供にも言うんですけど。「堂々と生きていいんだよ」って。それもやっぱり、自分に言っているようなもので。「こんな自分でも、堂々と生きていいんだよ」って(笑)

だから、もう自分は、色々な意味でですけど「自分から笑っていこう」というのがあるんですけど…なんか、小さい頃から、割と笑顔で過ごすタイプだったらしいんですけど。人から「あの人って頭おかしいんじゃないの?」って言われたことがあって、笑顔を止めた時期があったんですけど、やっぱり自分らしくない…と。楽しかったら「たのしい」って表現していいよね、って。その代わり、反対に私すごく泣き虫で、よく泣きますね(笑) そういう自分も、泣き虫でもいいじゃん、って。泣き虫の自分も、一回「よしよし」と可愛がって、それからまた笑う、という感じで。怒っているときもそう(笑)

「常に笑っていないと」というわけでもない、と。

わけでもない。最近の私が大事にしているのは、日々の喜怒哀楽。すごく大事にしている。人間、生きているんだから、怒ったり泣いたりがあって当たり前だし、それも全てがたのしいという感じで。ちょっと喧嘩したりしても、それを一歩引いた自分が観察していて、面白いです(笑)

感情的な自分を、観察している自分が居る。

「あ、私今これで怒っているんだ」って。私の考え方の癖だと思うんですけど、「じゃあ、なんで今それで怒っているの?」「今なんで悲しいの?」と、自分に訊く癖があって。それが、自分を幸せに向ける糸口、というか。問いかけ、かなあ。常に自分に。「じゃあ、どうする?」「じゃあ、何が嬉しいの?」「何に怒っているの?」と。

それは小さい頃からそうだったんですか?

こういう風に、素直に自分が出せるようになったのは、本当にここ最近。小さい頃は、笑っているだけで、こういうことを言ったりはしなかったです(笑) 楽しかったらニコニコと笑っているだけで。で、だんだんと自分を表現できるようになってきて、自信もつけることができたので。

小さい頃も自分を見ている自分は居ましたから?

うーん、居たかもしれないです。はっきりは分からないですけど、一歩引いて…一歩引いて周りを見ていることが多かったですね。観察が好きでした。今でもよく観察しますけど、「この人は何が得意かな?」とか「ここは苦手みたいだけど、こうしたら上手にできるな」とか。今もその観察は好きでやっています。

仕事場でも、自分の両親に対しても「あ、ここは苦手なんだな」「じゃあ、私はどうサポートしたらいいかな?」とか。なんでもそうですけど、チーム戦じゃないですか。みんなが同じことをしていたら偏るので、色々な色があって良くて。

それは仕事場でもそうで、うちの父がポンポン菓子を作る、だけど商品を詰めるのはすごく…ここで言っちゃいけないですけど、下手なんです(笑) だから、商品を詰めるのは私に任せて、伝票を書くのは母が上手…とか、そういう役割分担。サークルもそうだし、学校とかも全部そうだと思うんです。そういう意味で、色々な人を”発見”するのが面白いですね。

その人の役割みたいなものを発見して。

発見して、今はできないんですけど、仕事で発見した能力を伸ばすということも、どんどんしていきたいので。今は人形劇とか、活動をお休みしているものもいっぱいあるんです。いま続けているものといったら、読み聞かせぐらいなので。

最近始めた「発達障害の親の会」というのもそうだし、お母さんたちの素敵なところをいっぱい見つけて、それぞれの役割を持って今後はイベントなんかもできたらいいな、とも思うし。それを、仕事と並行しながら続けていけたらいいなと。全部テーマは同じ、私の中では同じ(笑)

これまでの話の中でも、大切にされていることがたくさん出てきたんですけど、心の美しさを保つために大事にしていることはなんでしょう?

難しいですね…さっき話したことしか出てこないんですけど、やっぱり”弱きを認める作業”かなと。

自分の弱い部分、できない部分を一旦認める作業。そして、最近大事にされているのは、日々の喜怒哀楽。このふたつは、近いところにあるんでしょうね。

そうですね、似たところですね。簡単に言えば、今をたのしむ。

それは、ずっと楽しい気持ちでいる…ということではなくて、今置かれている状況や感情を…

たのしむ。起きている状況も、全てですけどね。出会う瞬間だったり、別れがある瞬間だったり、全部「今をたのしむ」にひっくるめて言っているんですけど。

その「たのしむ」は、喜怒哀楽の「楽しむ」よりは「愉しむ」のほうが近そうですね。

その「たのしむ」と私が言うのを、誤解して受け取る方もいっぱい居て。私はその「たのしむ」の中に、色々な思いを込めて言っていても、やっぱり受け取る側によって違うので、その「たのしむ」は「わー楽しい♪」じゃないよって(笑) だから、伝えるのが難しいなあ、と思うんですよね。私もあまり色々な表現ができないので。

受け容れる、認める…というのが、結果として「たのしむ」ということになっているんでしょうか。赤塚不二夫じゃないですが「これでいいのだ」と。

そうですね(笑)

日頃口には出さないけど言っておきたいことや、言葉に出せず溜め込んでいるものなどはありますか?

(しばらく考えて)…ないですねぇ。この最近の私は、割とうまく出せているので…恵まれているかな、と思いますね。色々な人に助けられているので。そういう意味で、自分がちゃんと発散できて、自分が自分で居られるので。

一人で悶々と抱え込んでいるものもないと。

ないですね。「何とかなるさ」っていう(笑) そう考えたら…人から見たら、私はすごく大変な状況だといわれるんですけど。シングルマザーで、子供が4人居て、障害抱えて…で「よくやってるよね」と言われるけど、私はこれが自然で、普通で、全然辛いというのも…まあ、ちょっと辛くなったりもするけど、また(気持ちが)上がれるので。だから、常に心がパカッと開いている状態、です。すみません、変な表現かも知れない(笑) 感覚的には、です。

…出たり入ったりするわけですね。パーッと入ってきて、パーッと出て行くと。

そうそう。だから、これが私の自然体だし、ちょっと頑張っている私も自然体だし、急に立ち止まってコテッと寝ちゃうのも自然体だし(笑) 言っておきたいことかあ…「会社にしたい」ぐらいかな、今出てきたことは。

ほりうち商店を。

うん、まだ実現できていない部分では、会社にしたいという部分かな。今は「商店」なので。そうですね…ビジョンはいっぱい出てくるんですけど、言語化が難しい(笑)

写真・文/OURSELVES 取材協力/おのだサンパーク