今をたのしむ | 多原 美加

ご自身のことを話すのは、本当は得意じゃないと。

得意じゃないです。本当に…苦手でした。今でも、ちょっと苦手な部分があって。これは聞かれたことがあるかも知れないんですけど、私は4人目の出産後に脳梗塞という病気をしているので、ちょっと思考がゆっくりというか。滑舌が回りにくいところもあって、やっぱりちょっと時間が掛かります。聞かれたことを考えて、口に出すまでに。で、ちょっと違ったことを言ってみたりもしているかも知れないです(笑) ちょっと時間が掛かるので、そこら辺ではちょっと苦労もするし、仕事上でもそういうところでミスが起きないように、気をつけながらしています。

ご病気される前と後で、違うところはありますか?

精神的にですか?

そうですね、考え方だったり意識だったり。

あの、できない自分とか、弱い自分を、認められるようになりました。で、そういう自分を責めなくなりました。できない自分とか、頑張れない自分とか、既にいっぱい頑張っていたとしても「もっと頑張らないと」「なんで私は頑張れないの?」って、自分を責めていたところが、「できないものは仕方がないよね」と、一旦認められるようになったら、自然と前を向けるようになりました。

それまでは、できないこととか、周りの目線とか、「頑張れ」と言われていることに関して、すごくピリピリした状態というか…言われていることに関してすごく嫌だったのが、そういう声がまったく気にならなくなって。で、その時期はやっぱり自分が大嫌いで、表情もやっぱり暗かったし、「疲れてるね」っていつも言われてたんですけど、ちょっとずつそうやって自分と向き合って、できない自分も、できてる自分ももちろん「よし、これだけ頑張ったぞ」という風に、認められるようになって、ちょっとずつですけど自分を好きになって。

そうすると、周りの方の色々な心遣いにも気付けるようになって、すごく感謝が生まれて。今もそうですけど、ほんの些細なことでも、すごく感謝ができる。だから、病気をしたのが…そのときはすごく苦しかったですけど、今はすごく良かったなって。その経験ができて良かったなって。必要だから起こったんじゃないか?というぐらい、すごく良い経験だったなと思いますね。

今は、ご自身のやっていらっしゃることや、ご自身のことは好きになれましたか?

今は、好きです。自分のことが大好きですね(笑)

(笑)

今でも、できないところもあるんですけど、そういうものも全部ひっくるめて。自分も好きだけど、自分を大好きになったエネルギーを周りにお届けしたい、というか。そういうのもあるので。だから、配達していてもたのしいです。車で配達に向かっていて、後ろにいっぱいポンポン菓子をギチギチに積んで走っていてもすごく楽しくて。周りにちょっと良い景色が見えたっていうだけで、もうわーって幸せになっていくので。で、またそうやって笑顔で(ポンポン菓子を)お届けできて(笑) 私一人がニコニコしていても仕方がないのかも知れないですけど(笑) そうやって商品がお届けできるというのに、喜びを感じています。たのしいです。毎日が本当にたのしい。

いわゆるポジティブというのとは、またちょっと違う感じがしますね。ポジティブよりも、もうちょっと柔らかいような感じがしますね、美加さんの場合は。「前向きに考えなければ」という押し付けがましさみたいなのはないですね。

ああー。その「前向きに考えないと」というのは、マイナス部分をまったく無視していると思うんですよ。それは私は意味がないと思っていて。そこはちょっと苦しいかも知れないけど、一回ちょっと観察して、「ああ、こうだったな」って。それで、自分に嫌な感情が起きたら、それも一旦認めて「よし、分かったぞ」というだけで、全然違うんですね。それで、また前を向けるので。そこは無視してはいけない部分だな、というのが私の考えなんですけど。そこを無視していくと、やっぱり無理が掛かっているんじゃないかと。で、それが積もり積もって、どこかでドカンといくような気がするので。だからそういう負の部分を一回認める、という作業を私は大事にしたいと。

それは、やっぱり子供に障害があるから、そういう風に思うのかもしれないですね。子供に障害があるぶん、できない部分っていっぱい持っていて。そういう部分を「なんでできないの?」じゃなくて、できないものはできないと一回認めて。じゃあ、工夫してできることはいっぱいあるから、その工夫を生み出す。だから、できないものはできないと一回認める→じゃあどうする?っていう風な考え方。それは仕事でも何でも、全部に言えると思うんです。できなかったら「だめだ」という諦めではなくて、「じゃあ、どうやったらできる?」という、そういう風な考え方ができるようになったのも、子供から学んでいるのかなと思いますね、それは。すごく大きいですね、子供の存在というのは。