今をたのしむ | 多原 美加

お仕事をひと通り見渡せるようになって、今後どうしていこうというプランはありますか?

今後は…今はお店らしいお店がないというか、卸売業が主になっているので、できればちゃんとしたお店を構えたいというのがあって。そこに、人がたくさん出入りできて、色々な情報も発信していきたい、というのがあるので。将来的には、障害のある方の職業とか、そういう支援もできたらいいな、と考えていまして。その基盤づくりをしていきたいと思います。まあ、それはずっと先の話になるかも知れないですけど。

まずはちゃんと商品が出せるように、工場も大きくしたいですし…できればライン化もしたい。すごく大きな夢なんですけど。いま現状で考えたら、ちょっと難しいかなという部分はあるんですけど、そこまで今考えています。今父が一生懸命、体を痛めながら作っている状態なので、私も早く作ることから覚えていきたいな、とは思いますが。今は職場の環境を整えること、基盤を整えること、が目標ですね。そこから、色々な人が出入りできるかたちを、なにかしら作っていきたいというのがあります。

ご自分でポンポン菓子を作るのに、クリアしないといけない問題などはあるんですか?

今の私で言ったら、やっぱりちょっと「恐怖」もあるかな。大きな機械を扱うので、大きな音と気圧計というものの怖さもあるので。ポン菓子を作るのって、どういう風に作るのか知ってますか?

ぼんやりとしか知りません…。

圧力釜がありまして、その中にお米を入れて火をかけて、気圧をどんどん上げていくんです。例えば気圧が10なら10であがった瞬間に、一気にドンッって外すんですね。そしたら、すごい爆発音がして、お米が約10倍に膨れるんですけど、結構な衝撃で。うちでも代々作っているのが男性の方々。過去に妹も手伝って作ったこともあるんですけど、やっぱり女性からしたら、か弱い力でやっていかないといけない…というのにちょっと恐怖はあるんですけど、うん、それもちょっとチャレンジしたいところです。

あとは、砂糖の炊きの技術というか、見極めがすごく難しくて。色々なところでポンポン菓子を買われる方が、「やっぱり堀内のは美味しいよね」「あなたのお父さんが作ったのが美味しいよね」と言ってくれる、その砂糖の炊き。すごく艶があったりとか、香ばしさとか、そういうのが出せるようになりたいな、とすごく思うので。今うちの父にも「教えてね」って、言っているところです(笑)

限られた原料を使っているだけに、繊細な技術が必要なんでしょうね。

そうですね。やっぱり「すごく難しいんだな」というのは、傍で見ていて感じます。ちょっとした湿気とか気温で、お米の膨れも変わるし。それプラス、砂糖の炊きがちょっと遅かったり早かったりしただけでも、全然仕上がりが変わってくるので…。それが私にできるのかな?という不安もあるんですけど、その味を残したいという思いもあるし。砂糖も実は何種類かありまして、うちはいま三温糖というものを主流で使っているんですけど、甜菜糖というお砂糖も使って売り出して、それがとっても難しい。灰汁がある黒砂糖とか、その見極めですよね。やっぱり灰汁が出るので、焦げないように煮詰めて、良いところで砂糖をザッとかけるというのが…。

それをしているうちの父を、すごく「かっこいいな」と思うようになって。それまでは「なんかポンポン菓子って田舎臭い」じゃないけど、そんな風に感じていたりしたんですけど、最近は、それを続けてきたっていう凄さ、それをすごく感じていて。本当に、父が続けることで学んできたものを盗みたいし、ぜひそれを終わらせることなく続けたい、私が絶対に終わらせたくない、というのもあって。…なんですけど、現状であっぷあっぷしている自分も居て(笑) 子育てもあり、子供の障害もあり、そういうところで「大丈夫かな?」という部分は正直あるんですけど、やっぱりやりたいという思いのほうが強いので。なので今は日々できること、高望みし過ぎずに、今できることをとにかくやっていこうというので、日々動いています。

やりたい気持ちと、不安や恐怖とが、日々入れ変わったりしているようですね。

入れ替わったりしますね。でもやっぱり、立ち止まって「どうする?」って自分に訊くんですけど、そしたら「やっぱりやりたい」って思うので。それでまた「よし。」と、自分にこう(下腹に力を込めるように)クッと。すごい「頑張るぞ!」じゃなくて、ちょっとクッっと入れて、「じゃあ動こう」という感じで動くと(笑) やっぱりでも、そうやってお客さまもちょっとずつ私の顔を覚えてくれて、お話がいっぱいできるようになる、常連さんも来てるってすごく嬉しい。そういう…「人が好き」なんですね。うん。人がすごく好きなので、ポンポン菓子を通じて人がお客さまが笑顔になるというのもすごく好きだし…そうですね、そう、いま分かったのが「笑顔の橋渡し」なんです。

笑顔の橋渡し。

笑顔の橋渡し。笑顔を繋いでいきたい、広げていきたい、という。

単なる「橋渡し」よりも、そのほうがより腑に落ちる感じがしますね。

うんうん。…私は、言葉の表現というが苦手な部分で、こうやって話すのも実はとても勇気がいることなんですね(笑)

そうなんですか?

で、えーと、私の子供時代からの話をすると、とっても大人しくて、シャイで、人前で喋ることができないタイプだったんです。それが、ちょっとずつ商売を手伝うことで、そういう喋れない自分をちょっとずつちょっとずつ克服してきたんですけど。そこで喜んでもらえるお客さまの笑顔で、私も笑顔になって…笑顔はやっぱり伝染するんだな、ということを小さいときからそういう風に学んできて。やっぱり”喜び”ですよね。「お父さんのが美味しいよね」って笑ってくれるので、私も嬉しくなって「また頑張ろう」と思えるようになって。やっぱり笑顔の橋渡しですね。…すごく暑いです(笑)

暑いですか(笑)

結構喋るってエネルギー使うと思いませんか?小学校で読み聞かせをするんですけど、すごく冬の寒い日に行って、教室も暖房が入ってなくて寒いんです。だけど、絵本を持って読んでいると、体がどんどん活性化というか…暑くなってきて、最後はみんな汗をかいて教室を出る、という感じで(笑) 意外と声を出すってエネルギーを使っているんだな、と思いますね。温かくなった(笑)