関係性の先にあるものをつくる | 福岡 佐知子

福岡さん 「図書館」というのを、キーワードにやっているんですよ。図書館は、資料を収集して公開する、という機能を持った場所なので、街の中に居る人とか店とか技術とか、そういったものも全部「資料」という位置づけで、「拡大版の黒崎の図書館」というかたちで、色々なところに発信していけたらな、と。新しい街の魅力を作ろうと思って。せっかく図書館が出来たし、せっかく図書館に期待している人がいるので…そんな事業です。

新しく出来た図書館と、黒崎の街との関係性を作る。

福岡さん そうですね。

佐藤さん 「これがあるから、県外から人を呼び込める」とか、「何千人の集客を目的に」とかよりも、図書館の魅力と、その中の人たちの魅力が伝わり、今実際に黒崎に来ている人たち…店のピックアップも、私たちが自信を持って紹介出来る人たちや、黒崎で商売を頑張っている若手に限っているんですよ…そこに、元々居るお客さまが巡ったりとか、そういうことが起こったほうがいいよね、って。

一時的なイベントだと…黒崎には2週に一度ぐらい色々なイベントがあるんですよ。テント立ててゆるキャラが来て…みたいな。私たちが考えても、そういう発想は出て来ないから、じゃあ出来ることを…というので考えていった、という感じですね。

そういう企画は、どこかにモデルがあったりするんですか?それとも、黒崎の街の中から湧いてくるんですか?

福岡さん ヒントは色々なところにあります。例えば「街中に本を置く」というのは長野県の小布施でやっているプログラムで。それは、街の店主たちがピックアップした本を置く、そこに色々な人が尋ねてくる、ということをやっているんです。私たちは、何処からか輸入してくるというよりは、そこで遭ったことをどう活かせるか?というようなことをいつも考えるんですけど、今回は大量の本が黒崎に余っていて。

ほう。

福岡さん 黒崎の近所にある、ちょっとした図書館の分館が閉まったんですよ。で、そこにあった本が要らなくなった。で、普段はブックリサイクルといって、一般の方に10冊ずつ持って帰ってもらうというような機会があるんですよ。それをしたんですけど、それに人を集めきらなくて、掃けなかったんです。で、たくさん残っちゃった本を、図書館の館長さんが「もう捨てるしかないけど、どうしよう」と言っていたので、じゃあ、あれを真似てやってみる?ということになって。

でも、ただただ置くだけじゃなくて、店主さんとお話をして「どんなお客さんが来る?」「どんな本に興味がある?」「どんな本が来たら店のイメージアップになる?」ということを話して、その中からまた”女子力のあがる小説集”とか”お母さんのためのステップアップ本”とか、そういう風なカテゴリ分けを、館長さんに来て頂いてやってもらって。そうして10冊ぐらいの本を棚に立てて、小さな本箱みたいに。そうして、ちょっとずつちょっとずつ工夫していって。

佐藤さん やろうとしていることとか、出来ることとかは、他のサンプルもあるけど、全部「黒崎ミライイ会議」のメンバーから出た言葉だったり、出来ることだったり、何が大事と思っているか、というようなことは活かそう、と。それが一番のベースですよね。

福岡さん 製鉄の時代は、有名人や芸能人が企業祭なんかに呼ばれていて、バレーでもコンサートでも美空ひばりでも、北九州の人たちは全部タダで見れていたんですよ。だから、文化や自分が得るものに対して、お金を払うという習慣がないんです。だから、芸術劇場も街の中にあるけど、街の人は来ないんです。大分とか、福岡とか、外から来る…というのがあったので。

若い店主さんたちが「そんな街はあまり良くないよね」「自分たちは本を買うために福岡まで行かないといけない」「黒崎の街が魅力的になったらいいよね」というような声から、そうか「図書館」「本」といったキーワードは、みんなが望んでいることなんだな…というようなことを、今まで聞いた情報と組み合わせながら「それいいね!」みたいな。「言ったね」みたいな(笑)

佐藤さん 自分たちが「この人いいな」と思った人と、時間を掛けていっぱい話しているから、「何かしたいな」と思いついたときに「あ、この人!」と、すぐに浮かんでくるんです。すぐにお見合いが成立する、というか。言ったの聞いてるから…というぐらい、その前の段階で、たくさん話しているんですよね。その人の出来ること、好きなこと…それがあるから、今出来ている感じですよね。「はじめまして」という人は、協力店舗の中には少ないですね。

福岡さん だいたい人間関係が出来ていて、「この人だったら、いいねって言ってくれるだろうな」というようなのがあって、一緒にやっている感じです。

VOL.31に続く