自分の気持ちで選ばない | 林 里江

それも、今の仕事と一生付き合っていくための要素なんでしょうか?

はい、仕事に関係のないことは、基本的にあまりやりません。なので、行政書士の勉強も、「まだやればいいじゃない」と言われたんですけど、その労力をサロンや仕事に活かせる資格…スキルアップだったりアロマだったりに切り替えて、仕事に繋がることをしています。

そこは今置かれている立場が重要なんでしょうね。

いろいろやってるうちに何かを見つけよう…というタイプではないんですよ。逆算なんです。(目標が)あって、これに必要なことを選んでしていく、という感じです。「ここ」という目標があって、それに必要だと思うことをしていって、最後全部繋げたいんですよね。

年々思いは変わっても「ここ」は揺るがないんですね。

揺るがないです。この仕事という核があって、そのためにやったほうがよいこと、知っておいたほうがよいこと、読んでおいたほうがいいことをする。まったくジャンルが違うことに一生懸命になったりはしないですね…思えば。

それは趣味の分野も同じですか?例えば息抜きに絵を描いてみたり、写経をしてみたり…写経はもしかしたら、どこかで”美”に繋がるのかも知れませんが…

そうですね、結局何かしら繋がるんですよね。ただ、そのときに欲している、「これ」に必要と思うものは変わります。ただ、直接的に必要なもの(資格)はある程度取ってしまったので…趣味で全く違う…趣味自体があまりないですね。必要性がないと出来ない性質なのかも知れないですね。全てにおいて。料理も好きなんですけど、必要性がないと作らなくてもいいんですよ(笑)

(笑) 例えばお休みで時間が出来たから、ちょっと手の込んだ料理を作ってみようとか、そういうのが…

ないんですよ。逆に、毎日作らないといけない状況だったら、毎日作るのも苦じゃないんですよ。だから、自分にとって必要性があるかないか…なんでしょうね、多分。仕事が絶対的に必要で、直接必要じゃなくてもそれに繋がるような、深みが出るようなことに力を入れる…浅く広げるんじゃなくて、掘り下げていくような作業が好きなんだと思うんですよね。だから、繋がっていないようなことに、労力や時間を割きたくないのかも知れません。

そういうところは合理的なんですね。

そうなんですよ、合理的なんです。だから、決断も早いんです。決めたら迷わないんです。

それも、目的がはっきりしているからでしょうね。

だから、大学から早目に帰ってくるときも、帰らなきゃいけないから帰る、と。「嫌じゃなかった?」と訊かれたら、「嫌っていわれたら嫌だったけど」みたいな(笑) 自分で帰ると決めたら帰る。で、この仕事も、やると決めたらやる。そして楽しむ。あまり迷わないですね。

素晴らしいですね。

自分の気持ちで選ばないから、逆に決めやすいんだと思いますよ。

そうか、自分が「好き」か「嫌い」かじゃないですもんね。

「好き」か「嫌い」かで選んでいたら迷うけど、「そこに私がはまるのだ」と思ったら、それ以外の選択肢はないですよね。そこに「はまりたい」か「はまりたくない」かじゃなくて。「はまってから考えよう」という感じで、はまった状態で必要なことをやっている、という感じですね。

例えば、最初は一人でサロンに居るのが楽しかったので、仲間を増やすのも「私には荷が重い…」という感じだったんですけど、増えたら増えたで「増えたほうが楽しいじゃん」という風になっていくし、一人では出来ないことが可能になってくる。

人数が増えたぶんだけ考え方が違う人が増えるので、大げさなことはしないけど一纏めにしないといけない…というようなこともありますけど、自分のメンタリティが影響しないよう、自分のメンタリティを保つために、「今日は腹筋をしよう」とか「今日はエステをしてもらおう」とか「今日は半身浴しよう」とか、そういうものが増えてくるし、そのために必要なものは読んだり調べたりするし…という感じのやり方ですね。

いいですね。気持ちがいいです。

そうですか?自分自身はぐじぐじ悩んだりしてるんですけどね。でも、二週間ぐらいしたら忘れるので大丈夫です。苦しいのは二週間だけ(笑) 結局戻ればいいから、戻るための手段を幾つかもっていいですね。そういうもののなかのひとつとして、このサロンが皆さまの人生の中ではまってくれたらいいな、と思います。

林さんの中には、ご自身の”調子の良い状態”という感覚が、割とはっきりとあるんじゃないかな?と、今そう思ったんですけど。

あります。

その状態と比較して、「今日はちょっと調子が悪いな」とか…

調子が悪いときに、悪いまま引きずられることはないですけど。何かしらこう、上がろうとします。

多分ですけど、体の感覚というのが、意思決定に重要な要素なのかな…と。

そういう風になってきたんです。今まで全然そんなことなかったんです。

そうなんですか?

友達に話していたんですけど「最近、ホルモンバランスとか月の満ち欠けとかに、すごく情緒を乱されるよね。」と。心を、精神を自分でコントロールしようとしても難しいので、だから深呼吸してみたり、運動したり、瞑想したり…というのがあると思うんですけど…そういうことに振り回されるよね、という話をしたら、「それは、成長期が終わったから、大人はそうなるのよ。」と言われました(笑) 私はそれですんなり納得したんですけど。

そうなんですか?てっきり「エステの仕事を始めたから、そういう感覚に敏感になってきた」という話に落ち着くのかと思ったんですけど(笑)

いや、全然そんな話しじゃないです…すみません、落ち着かなくて(笑) 着地点を間違えた(笑) ただ、心が体に影響するということが、年々分かってきた。疲れも出やすくなるし、滅入った気持ちが体に出る。若いときは全然そんなことはなかったのに。メンタル的なことが肌に出たり、体に出たり…逆に、食欲がないから食べなかったりすると、精神的に不安定になるとか。そういう意味で、体と心って繋がっているなって、すごく実感するんですね。だから、コントロールできない心を、なるべく安定させられるようなものが、たくさんあったほうがいい。

結局は表裏一体ですもんね。心が体に影響するし、体が心に影響するし。

そうですね。だから、お客さまに「仕事ですごく落ち込んだけど、エステの翌朝に化粧がすごくのったから、仕事に行く気が湧いたんです。」とか、ここに来てエステの最中にお話しするお客さまも多いので、二人で喋ったりして「ここで喋ってすっきりした。」と言って帰ってくれることが本当に嬉しい。私もそうだから、そういう風な思いで帰ってもらえたことが嬉しい。そういうものをもっといっぱい、皆さまを癒せるようなことがいっぱい出来ればいいなって思っています。

[写真・文/OURSELVES 取材協力/moonflower]