かわいくて、楽しいもの | 安藤 僚子

(笑) どういう雰囲気の催しになったら良いなと思いますか?

犬飼さんはどう思っているか分からないですけど、結構私はダサくてもいいなと思っていて。ダサくていいというと、ちょっと語弊があるんですけど…雑多でごちゃごちゃした感じでいいな、と思っていて。「YCAMがやっている国際コンペティションの公募展示」というと、それだけで難しくなっちゃうというか。全然そうじゃなくて。

ちょうど先日、山口市の人と話していて「市民体育大会というのがある」と訊いて。山口市が陸上競技場とかを借りて、地区の代表が集まって運動会をやるという…そういうよく分からないけど参加するものって、すごいなあと思っていて。子どもの頃に、確か自分も参加したなあ、と。そういう感じの、手作りで、ごちゃごちゃしてて、賑やかな運動会のような作品を作りたいと思っているんですよね。

だから、見え方が格好良くなくてもいいし、敷居がものすごく低くていいなと思っているので、そういうごちゃごちゃした雑多な感じを、超先端な思想の元に作る…という、そういう雰囲気になれば良いなと思っています(笑)

まあでも、ある一定のクオリティは出すと思うんですけど。市民の人には「市民体育祭に行った」というような感覚のものを提供できたらいいな、と思っています。「最先端のeスポーツに触れた!」みたいなことではなくて「あ、これがeスポーツなんだ。市民体育祭みたいな感じだね。」ぐらいの、そういったことを感じてもらえたらいいかなと。

尖がったものを作ろう!という感じではなく、もっと敷居の低いものを。

そうですね。iPadとかも、それ自体は格好良いですけど、子どもでも触って楽しめるじゃないですか。そういう感じのもの、敷居の低さはそのぐらいにしたいです。あと、みんなが集える体育祭、変な垣根のない体育祭みたいなものが作れたら、それが自分にとっては良かったな、と思いますね。その雑多なごちゃごちゃした感じというのが、どう出せるかはまだ分からないんですけど、洗練させなくても良いかな、と思っています。ちょっとふわふわしてましたね(笑)

いえいえ(笑) ご自身がお仕事をされる中で、「これはちょっと譲れないな」と思うことを、言葉にするとしたら何でしょう?

なんだろう、難しいな…デザイン的なことでいいんですか?それとも生き方?

両方訊いてみたいです。

デザイン的なことだったら、「かわいくなきゃ、やだ」みたいなところはあるんですよ。「かわいい」とかいうと、また難しいんですけど…なんだろう、そこをもっとちゃんと喋れるようにならなければいけない、と思うんですけど。「かわいい」とか「楽しい」とか、そういう人をハッとさせるような、そこがないと嫌なんです。

難しかったり、コンセプチュアルだったり、尖がっていたり…というような方向性は好きじゃなくて、自分がデザインするんだったら「かわいい」とか「楽しい」とか、そっちの方向性でしたいと思っていて、それは結構意識的にやっています。わくわくさせるとか…出来ているかは分からないですけど、そういうマインドは持っています。

そのデザインに触れた人が、直感的に「うわっ」と感情が高ぶったり、テンションが上がったり、そういうことでしょうか?

んー、そうですね。特に空間なので…自分はお店の仕事が多いので、お店を作ったりするときに、その空間に入ったときに「うわっ」っと、世界感が「重たい」とか「強い」とかいうよりは、ふわっとわくわくするかわいさ。そういう、入ってみたくなるというか、気持ちが膨らむような雰囲気みたいなものは、空間デザインで出来ることのひとつだと思うので、そういう世界観みたいなものを目指しながらデザインする、というのは根底にありますね。

すみませんね、ざっくりして…なんか、そういうところにフィットする感覚を「かわいい」と呼んでいるんですけど。まず自分が「ここ楽しいな」「面白いな」と感じるものを作る、というのは思っています。

なるほど。生き方のほうでは何かありますか?

何かあるかなあ…あっ、大きな話だと、私は女なので、そのうち結婚できたらいいなとか(笑)、子どもが出来たらいいなとか、どういう状況になるかは分からないんですけど、ずっと仕事は多かれ少なかれ続けていきたいな、という目標があって。

私の中では「続ける」というのが重要な目標のひとつで、何かトライしたことを続けるとか、花を編んでいるおばあさんたちとの交流をずっと続けるとか、それは細い繋がりでもいいんですけど、やり始めたことを継続するということが目標ですね。もちろん、続けられなかったものもいっぱいあると思うんですけど…、とにかく、一番大きな目標としては、女性として仕事を続けていきたい、というのがすごくあります。それは結構、意地張って掲げています。